2022年4月13日
この記事では、配膳ロボットがもたらす具体的な効果を「売上増加」と「人件費率の低下」という視点から解説します。配膳ロボットを導入している企業の声などもピックアップしています。配膳ロボットの導入を迷っている経営者さまは、ぜひ、ご覧ください。
Index
はじめに、配膳ロボットを導入した場合の、具体的な効果について考えていきます。
配膳ロボットの導入により、ダイレクトに人件費を削減することは難しいです。配膳ロボット1台に対して、スタッフ1人分の人件費を単純には減らせません。理由は、配膳ロボットを案内・配膳・下げ膳でフル活用しても、スタッフの業務はなくならないからです。
配膳ロボットに料理をのせるのはスタッフです。また、下げ膳を配膳ロボットに任せた後、テーブルの清掃とセッティングをするのもスタッフです。配膳ロボットから料理を食卓にのせる際、サポートが必要なお客様もいます。
配膳ロボットの導入効果は、スタッフが忙しなく料理を運搬する手間を省くことにより、これまでよりも良質なサービスを提供することにあります。具体的な効果を次の章で紹介します。
つぎに、配膳ロボットによる人件費率(=人件費÷売上高)について詳しくみてみましょう。
セルフオーダーのファミリーチェーンをイメージしてみましょう。席数が40席の和洋定食を提供する店舗なら、1回転でも最低40回は従業員が配膳します。イタリアンランチなら、サラダやスープを先に配膳するので、回数は2〜3倍に増えます。
スタッフがこれらの配膳業務から解放されることにより、店内の忙しなさを抑制できます。スタッフも落ち着いて、お客様のフォローに気配りができるようになります。つまり、配膳ロボットを導入することで得られる効果は、ダイレクトな人件費削減ではありません。店舗全体の雰囲気を上質なものに変えることです。
その効果は、飲食店が本来めざすQSCHの実現につながります。
Q「クオリティ」・・・料理を一定の品質(味・ボリューム・盛り付け・温度など)に保つことによる、リピート意欲向上
S「サービス」・・・お客様のお出迎えや注文など、コンタクトのある場面ではない待機時間の雰囲気向上、待機スタッフの態度・姿勢・雰囲気づくりに注力することによる居心地の良さを提供
C「クレンリネス」・・・店内の行き届いた清潔感・スタッフの身だしなみ・感染症対策に注意して、食事シーンの安心感を提供
H「ホスピタリティ」・・・マニュアルに則った接客のみならず、お客様に寄り添った対応を実現することによる、従業員満足度の向上
(参考元:飲食店アプリ作成サービス『レストランスター』)
QSCHは、どれも人間が産み出す飲食店の価値そのものです。飲食店では、混雑時にスタッフの業務量が多すぎることで、サービス品質が低下します。
サービス品質の低下には、案内数の削減や料理提供時間の遅延など利益減少要因となるものが含まれます。ご案内するお客様の数を制限したり、スタッフの人数にあったサービスしか対応できなかったりすることは珍しくありません。
配膳ロボットを導入することで、スタッフの料理運搬負担が減り、ピーク時対応の幅が広くなるのです。対応できるお客様の人数が増えれば、売上増加につながります。人件費がたとえ変わらなくても、売上高に対する人件費率は低下するということになります。
また、スタッフの負担が減りやりがいが増えれば人材が定着する可能性が高いです。その結果、求人費用が低下し、営業利益(売上総利益-営業経費)の増加につながります。
ここまで、人件費率の低減について解説しました。慢性的に人材不足に陥っている場合には、常に求人コストがかかります。ですが、配膳ロボットを導入することで、今いるスタッフ数で業務をこなせるようになります。スタッフ数を維持することにより、次のような業務を削減できます。
このように、人件費と労働管理にかかるコストを削減できる場合もあります。配膳ロボットの導入により、利益がアップする仕組みは状況により異なってきますが、ポジティブな効果が期待できます。
ここで、配膳ロボットをすでに導入している企業の声をピックアップします。
ガストやしゃぶ葉を全国に展開する「すかいらーく」では、配膳ロボットBellaBot(PUDU)を2022年度内に3,000台の配置を予定しています。2021年度に、一部店舗で実験的導入をした結果、次のような効果を得られたことから本格導入に踏み切りました。
(参考:すかいらーくグループ経営戦略)
また、配膳ロボットと人件費率について、次のようにコメントしています。
”待ち時間を解消し、行き届いたサービスを実現することで、回転率向上によるピークタイムの客数増につながっています。当社では、配膳ロボット導入後もスタッフ数は削減しておりません。人とロボットの協働により生産性が向上し、ピークタイムの客数が増えたことにより、人件費率が削減しています”
(参考:FoodClip『しゃぶ葉やガストが導入する「配膳ロボ」の実力は?』)
火鍋レストランチェーン「海底撈火鍋(カイテイロウヒナベ)」では、配膳ロボットを含めテクノロジー強化に取り組んでいます。食品安全・サービスの質・運営効率などの改善を実現し、飲食業界から注目を集めているチェーン店の一つです。北京、広州、上海などに出店を拡大しています。
海底撈火鍋では、2010年代より、飲食店運営のスマート化に動き出してきました。配膳ロボット・ロボットアーム・タブレットオーダーなどを駆使しています。バックヤードは無人化を徹底。ホールは、配膳ロボットと協働しつつ、スタッフが主導するスタイルを貫きます。
このように、テクノロジーを融合したレストランの海底撈ですが、次のように運営方針を述べています。
テクノロジーは運営上の課題を解決する手段であって、単純に人材に替わるとは考えていないとも述べています。「ぜひ、また来たい」と思える体験を提供することを今後も目指しているとのことです。
(参考:36Kr Japan『火鍋チェーンの「海底撈」がスマートレストランを開業、飲食業を改革』)
「すかいらーく」「海底撈」のコメントをピックアップしました。配膳ロボットの活用の深さが見えてきましたね。中国では、飲食店とテクノロジーの融合に早くから取り組んでいますが、その目的は、あくまでも効率化であり、人の代替ではないようです。サービスが向上した結果、人件費率が低下しているのですね。
さいごに、配膳ロボット導入時の初期投資を抑える方法を紹介します。配膳ロボット導入効果をアップする方法の1つとして検討してみてください。
月額制などレンタル利用を活用してリスクを低減できます。W/ROBOでは、PUDUの配膳ロボットを取り扱っております。現時点では、販売・リース・レンタルにてご利用いただけます。導入時リスクを低減したい場合には、ぜひ、レンタルやリースをご検討ください。(リースやレンタルについては事前の審査が必要となり、審査の結果によってはご希望に添えない場合もあります。)
月々定額にてご利用いただき、3年間継続してご利用いただいた場合、配膳ロボットの返却は必要ございません。オーナー様のもとで、引き続きご利用いただけます。
5年契約の更新制です。5年経過後に再リースまたは返却となります。リースについての詳細は追って公開予定です。ご相談は随時、承っております。
配膳ロボットの導入には、各種補助金制度が活用できる場合があります。補助金を利用して、初期投資を抑える方法もあわせてご検討ください。
などの補助金制度があります。申請には期限があるため、こまめに商工会議所や各省庁のHPから情報をチェックしておくとベターです。一例を紹介します。
「小規模事業者持続化補助金」・・・働き方改革や新制度へ対応するための補助制度、ウイルス感染拡大防止のための補助制度(詳細:経済産業省 中小企業庁)
「ものづくり補助金」・・・DXに関わる新事業の展開やものづくりへの補助金(詳細:ものづくり補助事業公式ホームページ)
「独自の制度」・・・地方自治体による独自の支援制度
・愛知県 「サービスロボット社会実装推進事業」
・福島県「福島ロボットテストフィールド」
などがあります。上記は一例です。補助金制度について詳しい情報は、配膳ロボット導入に関連する助成金&補助金をあわせてご覧ください。申請方法や相談場所を紹介しています。
配膳ロボットの導入には、初期投資・ロボットフレンドリー環境が必要です。配膳ロボットを導入することは、必ずしも正解とは言い切れません。それでも、配膳ロボットの導入は、売上増加や飲食店QSCHが向上する可能性があります。
飲食業界で配膳ロボットを導入する目的は、単純にスタッフを削ることではありません。スタッフにしかできないホスピタリティを実現し、サービス品質を向上させることが真の目的です。配膳ロボットの普及とともに、利便性という効果のみならず、飲食店の感動体験にも関わる効果が解りつつあります。