2021年12月6日
この記事では、外食産業で広がる配膳ロボットやモバイルオーダーなどDX(デジタルトランスフォーメーション)について紹介します。業界の垣根を超えて広がるDXの概念とは。時代が求める知識を解説するとともに、飲食店で活用される配膳ロボットやモバイルオーダーシステムなど、DX関連の動きを解説します。配膳ロボット導入を検討する際、DXについても考えるきっかけになると嬉しいです。
Index
withコロナ時代に突入し、飲食業界でもDXというワードが使われる場面が増えてきています。まずは、DXについての概要を解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、政府が推し進めている、企業のイノベーションのことで、ITなどのデジタル技術を利用した変革を表す用語です。
イノベーションとは、既存の価値観の殻を破ることや、従来にない改革や変化、改革を意味します。経済産業省によるDX推進のためのガイドラインでは、DXを次のように定義しています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。“(引用:経済産業省『DX推進ガイドラインVer. 1.0』)
飲食業界でいえば、これまで密接な関係がなかったIT業界と、互いに技術を融合させることで新しい価値を創造することになります。
情報が石油に代わる資源となりつつある社会で、企業は多くの変化に対応する必要があります。そのためには、AIやビッグデータなどのデジタル技術を駆使したビジネス構想が必須です。
業種を問わず、デジタル技術と手を組んだ経営のDXを進めるため、総務省と経済産業省などが中心となり、企業向けセミナー開催や「DX推進ガイドライン」策定など、企業が実践しやすい環境を整備しています。
では、なぜ急ピッチでDXの整備が推進されているのでしょうか。その理由の1つに『2025年の崖』があります。
2018年、経済産業省は『2025年の崖』というレポートを発表しました。
その概要は、日本企業が現在の既存システムから脱却できずに業務を続ければ、2025年にかつてない危機に直面することが想定されるというものです。
「2025年」とは、これまでの既存システムを構築し、運用・保守を行い業務を成り立たせてきた世代が定年を迎える時期にあたります。企業がDXを実践しなければ、既存システムを成り立たせてきた人材の定年退職により、業務にかつてない支障が生じるとの予測がなされました。システムコストの負債化、既存システム技術者の不足、業務が成り立たなくなるなど、市場に対応できなくなる事態が起こりうるとのことです。
現状に警笛を鳴らすレポート「2025年の崖」は、多くの業界にとって、たいへん衝撃的なものとなりました。このことに加え、withコロナ時代の経済活動では、非接触や感染対策が求められ、DXの動きが様々な場面で見られるようになっています。
DX推進の背景は、次のようにまとめることができます。
飲食業界ではまだまだ馴染んでいないDX関連ワードが多くあります。チェックしておきましょう。
これまでも、IT化やデジタル化というワードが多くの場面で使われてきました。DXと何が違うのか気になりますね。明確に使い分ける必要はないそうですが、使い分ける場合のポイントを押さえておきましょう。
「IT化」(information technology )
アナログで行っていた作業をデジタル化することです。効率化を目的に行う業務フローへのアプローチとして、コスト削減や効率化の意味合いがつよいです。
「DX」(Digital Transformation )
これまでの業務フローを抜本的に変えることです。売上拡大や顧客獲得など、顧客からみても新しさを感じられる変化をいいます。
テクノロジーを組み合わせて新しい価値を生みだすことがDXということになりますが、その際、次のような各テクノロジーを活用します。こちらも併せて知っておきたいワードです。
「AI」(Artificial Intelligence)
人工知能のことです。サンプルデータを繰り返し学習して、判別ルールを構築する機械学習や、人間の脳を模したディープラーニングなどが技術に使われています。
「IoT」(Internet of Things)
モノのインターネットと呼ばれ、スマートフォンから離れた場所の家電を操作するなど、ネットワークを使ってモノへ接続することです。
「クラウドコンピューティング」
ネットワークやサーバーなどのIT資産をインターネットを使って、利用する形態のことです。すでに生活に浸透しているDXに欠かせない必須の技術で、クラウドと略されています。
ここまでお伝えしたようなテクノロジーを利用する業務変革が、多くの飲食店で進んでいます。特に、配膳ロボットと同じく導入が急がれるのが、モバイルオーダーシステムです。
注文と決済をスマートフォンで完結できるモバイルオーダーシステムは、すでに、ファストフード店や一部のコーヒーチェーンで活用されています。ですが、これらを除いた多くの飲食店では、食後にまとめて会計をすることが一般的です。いま、このフローを見直す店舗が急増しています。
外食シーンでは、会計の場でも「まごころ」がこめられています。これまで慣習として根付いていた「おもてなし」の在り方が大きく変わっていく可能性があります。このような価値観そのものを、過去にとらわれずテクノロジーを使って積極的に変えていくことがDXです。
ただし、併せて「アナログだからこそ」の魅力が、より一層の輝きを放つ時代であることも見落とせません。メニューやサービスに魅力があれば、それがアナログなモノやコトでも価値は薄れません。
食事のために店舗に出向き、リアルに人と集う体験は、オンライン飲み会が普及したからこそ、貴重なひとときを感じられるものです。飲食店は、人との時間をこれまでになく大切に共有できる場になっていくでしょう。
高齢化や人手不足、感染症対策など社会背景は、デジタル化を必要不可欠とします。そこにあらがう必要はなく、DXを恐れる必要もありません。店舗独自の魅力が、DX時代だからこそ価値を創造し続けるといわれています。
今後の飲食店では、キャッシュレス化や配膳ロボットが導入され、スタッフは人にしかできないサービスに集中できるようになると予想されています。
経済産業省のガイドラインにて、経営の在り方や仕組み、DX実現の基盤であるITシステムの構築イメージが示されています。
(画像元:経済産業省『DX 推進ガイドラインVer. 1.0』)
DXは単体として使うワードではなく、概念としてあらゆる場面で使われるワードであることがわかります。
配膳ロボットなど自動化の推進は、飲食業界DXの代表例ですが、予約システムや決済システムを店舗発信SNSと連携させるサービスもDXの1つになり得ます。
また、店舗の立地やニーズに応えるメニュー分析をAIが行い、メニュー化やSNSでの販売促進に活かすなど、テクノロジーと手を組んだ新しい取り組みもDXです。
店舗独自のメニュー開発への想いや取り組みなどをSNSに投稿し、SNS経由でのテイクアウト予約・代金決済までをつなげることも飲食業界のDXとして期待されています。
現状、このような役割を自動化することが考えられています。今後もDXが進むにつれて多彩にテクノロジーが組み合わされていきそうです。
withコロナによる非接触が求められ、キャッシュレス化が短期間で拡大しています。キャッシュレス化は、一時凌ぎのイノベーションではなく、非接触が求められない状況になってもずっと続くものと位置付けられています。キャッシュレス化については「外食産業もDX時代へー後編ー」で詳しくお届けします。
キャッシュレス化、モバイルオーダーが少しずつ導入されてきたことに加え、配膳ロボットや消毒ロボットなどの自律移動ロボットも飲食店を支えるテクノロジーの仲間となりつつあります。
これまでに飲食店で導入されてきたテクノロジー
など
これから飲食店で導入が期待されるテクノロジー
など
これから開業する店舗では、DXを前提に店舗コンセプトやレイアウトを考慮することになるでしょう。
ますます、自動化が加速する飲食業界ですが、スタッフの接客に勝ることはありません。スタッフによる接客と「同等の価値」を配膳ロボットや自動システム化に求めるのではなく「新しい価値」を自動システム化に求めることが飲食店DX理解のポイントとなります。
今回は「外食産業もDX時代へー前編ー」として、
ことなどをお伝えしました。
なお「外食産業もDX時代へ―後編-」では、キャッシュレス化・モバイルオーダーについての情報をお届けします。ぜひ、ご覧ください。
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